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死の恐怖

死の恐怖



この世に生を受け、どれほどの生物達が納得して
自らが望む死を迎えることが出来たのだろうか。

どの世界、どの時代にも自らが選択できる最期など皆無であり、
我々の思惑とは無関係にそれは我々のすぐ後ろを追いかけてくる。
まるで意志を持った「死」という生き物の様に。

時には遠くで傍観し、時には背中を押されそうなほど近づいてくる。
我々はそれが今ではない、といわんばかりに足掻き、もがく。

だが、その決定権は我々にはないのだと理解する時、
もう、この世には存在していないのだろう。

どこからともなくやってくる「死」というやつは
要は、カタチがあるもの全てに「平等」に訪れる、権利なのだ。
それが理解出来るものは数少ないが、私は一人だけ、知っている。

私の名はポラック。
大老殿ギルドが公認している数少ない医師の一人だ。

私は、運び込まれる患者の人体を治療する事が仕事であり、
破損箇所は義体化し、可能な限り一般生活が出来る様にリハビリを施す。
私の元へ運ばれてくる患者の大半の相手は大型のモンスターらしく、
一命を取り止めたとしても、もうハンターには戻れないだろう。
患者が私の顔を見る時とは、

もうハンターに戻れない

つまりそういう事なのだ。
そう、そのはずだったんだ。
あいつに出会うまでは・・・・。





                      

本格的な寒さに突入した寒冷期の夜遅く、その男はやって来た。
その風貌は、見るからにこの土地のものではなく、異国のものだとすぐわかる。
ポラックは言葉が通じるのか不安に思ったが、
彼よりも先に、深夜の珍客が口を開いた。

「頼む、助けて欲しい。」

男はそう言ったが、ポラックは別の事を考えていた。
追われている、かくまって欲しい、だなんて言い出したりしてくれるなよ。
そうポラックは考えていた。
ところが、どうも男の様子がおかしい。
追われて逃げ込んだ、という訳でもなさそうだ。

「まず、用件を聴こうか。」

とポラックは診察用の丸イスを勧める。
男もこのままでは話が進まないと思ったのだろう。
大人しくその申し出を受け、腰を下ろした。

「キミの名前は?どこから来た?」

ポラックは当たり前の様にたずねる。
一瞬、戸惑った様にも見えた。

「死神」

男はただ一言、自分は死神だという。
まさかな、そう思いつつもどこから来たのかもたずねる。

「東の国だ」

そっけない。
ただ、それ一言。
これではラチがあかないと思ったポラック。
さっさと用件を済ませようと話しを切り出す。

「さて、それで、私にどうしろというのかね?」

やっと話しの核心に入ったと感じたその男、
自称「死神」はおもむろに表へ出て行った。
あっけにとられるポラックを他所に自称「死神」が戻ってくる。
腕には何かを抱えている。
自称「死神」は再度、頼む、助けて欲しい、とポラックに訴える。
二度目のそれは、悲痛な叫びの様にも聞こえた。
そう思ってしまっては、ポラックも黙ってはいられない性分なのだろう。
彼も黙って診察の準備を始める。

「治療対象はキミかね?それともキミの腕の中のものかね?」

「こいつだ」

そういうと、死神は腕の中のものを診てくれと差し出した。
これは、とポラックも不思議に思った。

「これは何だね?人間ではない事はわかるが・・・」

「森で罠に掛かって死にかけていた」

診れば脚と胴には深く何かが食い込んでいた跡が診て取れる。
ポラックは考え込む。

「私は人間であればこその医者だが、これは人間ではない」

「では、助けられないのか?」

死神は諦めるつもりは無いように食い下がる。

「そうではない、私は人間専門の医者だといっているんだよ。」

死神は戸惑う。
だからどうなのだ、と言わんばかりの表情だ。

「無理なのか?こいつを助けられないのか?頼む、」

その言葉を遮る様にポラックは言葉を続ける。

「あくまで人間の医者と言っているんだ。期待してくれるなよ。」

死神はありがとう、ありがとう、と何度も何度も繰り返す。
死神に感謝されるのも悪い気はしないものだな、
そんな思いがふと、頭を過ぎった。

「でも、助からなかったからといって俺の魂を連れて行くなよ?自称「死神」さんよ。」

ポラックは冗談混じりにそう言ってみる。
続けて死神は言った。

「もちろんだ、そんな事は決してしない。
 この先、キミの命が尽きる時にはキミの望む死を叶えよう。」

「そいつは嬉しいね、自称「死神」さん。頼りにいているよ。」

何ともおかしな会話だな、と思いつつ、ポラックは目の前にいる小さな命に対峙する。

「コイツは犬かい?あまり見かけない犬種のようだが。」

「俺にもわからない。」

二人はついさっき知り合ったばかりとは思えないほど、会話を交わしていた。
死神の連れてきた犬の様な生き物は、中型犬にも満たない体格で、
まだ子供の様な印象にも診て取れた。

「声が聞こえたんだ」

唐突に死神がそう言った。

「森で何人かの人間が獲物を狩ったり、罠を放置している様な荒らした跡があった。」

「フム」

とポラック。

「普段ならそんな事には気にも止めない。
 だが、その時、コイツの今にも消えそうな声が聞こえたんだ。」

意外とよくしゃべる死神なんだな、とポラックは思う。

「状況はわかった。恐らくコイツの親はハンターにやられたのだろう。
 子供は大して価値がないと踏んで、罠のまま放置したのだろうな。」

ポラックは自分でそう分析していながら、何故か激しい怒りがこみ上げる。

「俺はこんな子供まで、無駄に殺させるためにハンターを治療しているんじゃない!」

無意識の内に診察台に拳を叩き付けるポラック。
自分でも予想外の行動だと思った。

「すまん、感情的になってしまった。治療を続ける。」

われに返ったポラックはそう、自分に言い聞かせるように指先の感覚に集中した。

「いや、いいんだ。まだ救いはあるのだな。」

何か言ったか?とポラックは顔を見ず聞き返すが、死神はただ一言、

「何も」

そうか、とポラックは納得し治療に専念する。


続く


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