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死の恐怖

死の恐怖



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最愛の家族へ贈る唄 第一章



私の名はポラック。
ドンドルマで医者として生活している。
ある日の寒い夜遅く、死神と名乗る男が、
罠に掛かった瀕死の動物を私に診てくれと助けを求めて来た。
人間以外は専門外ではあったが、どうしても放っては置けない、
そんな気がしてならなかった。






                        

死神が連れて来た動物の傷は思いのほか深かった。
大量の失血による心肺機能低下に脚の骨折、
特に肋骨の骨折によるダメージが深刻だった。

大きさは中型犬にも満たない、まだ子供の犬の様だった。
死神の腕から渡された瞬間、助からないかも知れない。
直感的にそう思った。

もし助からなければ、彼は、死神と名乗った男は、どれほど悲しむ事だろう。
ポラックは、さっき会ったばかりの死神が不憫でならなかった。

恐らくはこの寒空の下、
この子犬を見つけた森から息の続く限り、私のもとへ走って来たのだろう。

そうまでして何故、死神は助けたいのだろう?
今にも消えそうな命の灯火を消すまいと、私を頼って来たのは何故だろう?

そんな思いが駆け巡る。
しかし、そんな事では助かるものも助からなくなる、
そう自分の頭の靄を振り払い、我に帰った時、自分を叱咤する。


何を考えているんだポラック、命を引き留める事、それがお前の仕事だろう?


そう、自分自身に言われた気がする。

「そうだったな」

独り事の様に呟き、最後の仕上げに掛かる。
敢えて、死神は何も言わなかった。

その後、折れた肋骨による肺へのダメージも確認出来ず、
奇跡的にも、肺を傷つける事なく処置する事が出来た。

気が付けば、もう朝だった。
表は低い朝日が昇り、暖かな陽の光がポラックの頬を照らす。

今回は「患者」と表現してよいものか、と思案していたポラック。
呼吸も安定し、眠る子犬を見て安堵のため息をついた。

「処置はこれで大丈夫だと思う。」

ポラックにはそう伝える事が精一杯だった。
何しろ、前例がないのだ。
自分も不安になるし、これ以上のいい言葉が見当たらなかった。

「しかし、感染症や回復の経過観察は必要だ。」

ポラックの医者らしい言葉に死神はとても満足している様だった。

「俺はアンタを信頼している。完治するまで頼まれてはくれないか?」

「無論だ。これはもう私にとっても「患者」だからね。」

死神の申し出をポラックは快く聞き入れた。

「しかし、かなりの費用が掛かる事が予想されるが大丈夫かね?」

「いくらだ?」

その問い自体にはポラックは応えれる確証はなかった。
通常、ハンターとはギルドにて登録制となっている。
その為にもポラック達がいる様なもので、
身体的不備、健康上の不備、精神的不備、エトセトラ・・・・。
それらが満たされなければ「ハンター」と名乗る事すら許されない。
不適切な者へは許可が下りない仕組みなのだ。
無論、それは治療の際にも当てはまる。
つまり、登録ギルドの保障や、納税者でなければ、
全ての費用は自費であり、その場で払わなければいけないのだ。
使用した薬品などに調査が入れば厄介な事になるな、
ポラックはそう感じて死神にたずねてみる。

「キミはギルドに所属しているのかね?」

「そんなものは知らない。」

だろうな、とポラックは納得した。
見るからにこの土地の者ではないのだから当然と言えば当然か、と
思案していたポラックに死神が更に言う。

「だが、金の事なら心配はない、安心してくれ。」

それは、死神なりにポラックを気遣った精一杯の配慮だった。

「そうか、それはありがたい。しかし、だ。
 現時点では総額など出せないが概算は出せる。」

「いくらだ?」

「恐らく、20万Zから25万Zは掛かるだろう。」

「フムン」

と死神。
何やら思案している様だった。

「この土地での通貨は持ち合わせてはいないが、これで足りるだろうか?」

そう言って死神は自分の真っ黒い、まるで影そのものの様なマントから
何かを取り出し、それをポラックに渡した。

「これは・・・宝石・・・・?」

手渡されたそれは、大きさにして15cm程の球体で、
見る角度で表面の色が変わる、何とも不思議な石だった。
よく見ると、中で何かが揺らいでいる様にも見えた。

「初めて見る石だ、これは何という鉱石かね?」

石に興味を持ったポラックがたずねる。
だが、死神の答えはとても簡単なものだった。

「知らない。」

余りにも予想外の答えにポラックは笑いがこみ上げた。

「こりゃぁいい、『知らない』か!」

ふと我に帰るポラック。
重要なのはこの石が、「患者」を完治させるだけの価値があるのかだったな、と
頭を切り替える。そしてこう思った。
彼が、この死神と名乗った男が、こうまでして私を訪ねて来たのだ。
誰も気にも止めない小さな命を助けてくれと、私に託したのだ。
こんな人間は見た事がない。
そう、ただの一度も、ポラックは見た事などなかった。
ただの一度も・・・・。


一旦、話を切り上げた後、二人は暖炉のそばにいた。
贅沢なものではないが、温かみのある優しい色をした絨毯に二人は腰を下ろし、
ポラックは我が家特製のスープとパンを二人分用意した。
身体を暖めつつ、死神にも勧める。
食べ方がわからないのか、死神はポラックの食べ方を見様見真似で口に運ぶ。
スプーンの使い方を知らない国があるのだな、とポラックは思った。
味はどうかと心配になったが、
美味そうに平らげる死神を見ていらぬ心配だったな、と肩をすくめる。
そして、死神が口を開いた。

「こんなに美味い食べ物は生まれて初めてだ。」

予想外の評価に驚くポラック。
間に合わせの物しか用意していなかったのに、彼は、死神は、
これ以上ない程、美味かったと言ったのだ。

「本当に不思議なやつだな、キミは。」

「そうか?気にした事もなかったな。」

やっぱり不思議なやつだよキミは、と心の中で思いながら言った。

「このスープ、ポラックスペシャルが食べたければここに来る事だよ。
 キミにならいつでも特別料金で振舞おう。」

「それはありがたいな。良心的金額で頼む。」

そう、二人はお互いの顔を見合わせて笑った。
その後、二人は色んな話をしているとあっと言う間に時間が過ぎていた。
それでわかった事はといえば、
彼は東の島国からやって来た事、家族は居ない事、仕事でドンドルマへ来た事、
決まった住居は持っていない事、年齢は自分でもわからない事、・・・・・。
ますます謎が深まってしまったな、とポラックは思った。
その中でも出会った時からの疑問が口をついて出た。

「どうして死神と名乗るのかね?」

死神はそうくるだろうとわかっていた様に口を開く。

「死神は死神、それ以上でもそれ以下でもない。」

やっぱりそう来るか、と肩をすくめるポラック。
しかし、と死神は続ける。

「私はどんな存在にでも、一番身近にいる隣人の様なものだ。」

なるほど、とポラックは聞いていた。
その言葉の意味通りなら理解出来る。

「では、キミは本当に死神だと言うのかね?」

改めて問うポラック。

「そうだ、私は死神だ。」

やれやれ、とため息をついた。
もし、彼の言う事が本当だとすれば、目の前に居るのは死神そのもので、
もし、そうでなければ、ただの精神異常者だろう。
どちらに転んでもいい結末は待っていないだろうな、と考えていた。

「私も医者の端くれだ、毎日、生と死の間で戦っている。
 だから、死神がいても何とも思わないが、いざ目の前に居るとなると戸惑うな。」

「すまない。」

他人が見ていれば、これが人間と死神のやりとりだろうか?と滑稽に思うに違いない。
しかし、彼を見る限りでは普通の人間だし、
年齢にして20歳くらいではないかと思わせる容姿だった。

「まぁいい、今日のところはここで休んで行きなさい。
 もし、明日も宿が決まらないのなら私のところへ来るといい。
 特別料金でポラックスペシャルをご馳走するよ。」

「ありがたい、その時は良心的金額でお願いしたい。」

こみ上げる笑いに任せて二人で笑いあった。




続く



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