FC2ブログ

Welcome to my blog

死の恐怖

死の恐怖



初めて読まれる方は↓からお進み下さい。
最愛の家族へ贈る唄 第一章

第一章 Ⅱは↓からお進み下さい。
【最愛の家族へ贈る唄 第一章 Ⅱ】





                         

夜が明けてから、どれほどの時間が経ったのだろう。
朝日を浴びた建物からは、白い靄が立ち上り、
陽の光を目一杯受け止める様に、早起きなアイルー達が伸びをしている。

二人は色々と話した後、子犬の「患者」の様子を見るために特設ベッドへ来ていた。
静かに寝息を立てて眠る子犬を確認すると、
死神と名乗る男はゆっくりと立ち上がり、出口へと歩き出す。

「もう行くのかね?」

「ああ、仕事が待っている。」

そうか、とうなずくポラック。

「仕事が終わったらコイツの様子を見にまたここへ来てくれ。」

死神は何も言わず静かにうなずいて、フードを深く被り、陽の光に中へ溶けていった。
それを見て驚くポラック。 慌てて飛び出すが影も形もない。

「もういないのか・・・・」

ほんの一瞬の出来事。
今まで自分は夢を見ていたのだろうか?と、さえ思った。
自分が診た患者も夢なのか?と思い振り返るが、患者ちゃんとそこにいる。

「お前は現実なんだな。」

一言ポツリと口にしたとたん、待ちかねた様に眠気が襲ってくる。
ポラックはもう一度、患者の容態を確認した後、
自分も少し寝ようとベッドの中へ潜り込んだ。


夢の中でポラックは、昨夜の出来事を思い返していた。
無意識の内に再現される場面の数々。

「死神、ああ、そういえばこんな顔だったな。本当に死神なんだろうか・・・」

未だに信じられないポラック。

「そんな事はどうでもいいか・・・、例え死神であっても、人間が無視する様な
 命を救ってくれと人間に頼みに来た死神だ、悪いやつじゃないさ・・・・・」

ポラックは、死神と名乗った男の存在がどうしても無視出来ない理由は
たぶん、名前不相応な行動にこそ、
自分は無視出来ない理由があるのだろうと考えていた。

次第に夢が途切れ途切れになっていく。

「そういえば、昨夜は急患も来なかったし珍しい夜だったなぁ・・・・
 いつもこうならいいのになぁ・・・・・」

そう思ったのを最後に、ポラックはさらに深い眠りへと落ちていった。








何かを叩く音が微かに聞こえる。

ドンドンドン!

遠くに聞こえるその音が、次第に近くで聞こえる様になってくる。

「誰だよ・・・、こっちは夜勤明けみたいなもんだぞ・・・・」

まだ動きの鈍い身体を引きずる様に歩き出し、
その音の出所をたどって行くと出口にたどり着いた。
鍵を外すポラック。

「先生!どれだけ待たせれば気が済むんだ!」

「そんなに前から来ていたとは知らなかったよ、徹夜で急患相手だったものでね。」

だから眠いんだ、察してくれよ思いながらあくびをする。

「そんな事より大変なんだ!重傷者多数、生存者は不明、現場まですぐに来てくれ!」

大老殿ギルドの衛兵が血相を変えてポラックにそう訴える。
寝起きに聞くには最悪のモーニングコールだなと頭を抱えるポラック。

「救急医療チームはどうした?それでも足りないのか?」

「足りないなんてもんじゃない!とてもじゃないが手が足りないんだよ!」

「わかったから、詳しい状況を説明してくれないか?
 このまま出発してもとてもではないが仕事にならんよ。」

何でこんなに冷静でいられるのか、と衛兵は苛立つ。

「兎に角、来てくれ!」

そう言われるのがはやいか、腕をつかまれ馬車で現場近くまで連れて行かれた。

「これではまるで誘拐か拉致じゃないか・・・・」

ぶつぶつと文句を垂れるポラックだったが、現場の森に近づくにつれ、
周囲に漂う異様な気配を感じるのだった。
馬車から降りて現場を目指す。
次第に、火薬や薬品の臭いに混じって血の臭いが強くなってくる。

「もうすぐか・・・・」

医者という本能が完全に目を覚まし、自然と歩みを早めていた。
と、その時、先頭を行く衛兵の動きが止まる。
一瞬、息が止まる様な錯覚に襲われた。
その光景は正に地獄絵図そのもので、辺りに聞こえるのはうめき声だけだった。

「遅かったか・・・・!医者までやられているなんて・・・・!」

その言葉を確かめるために、ポラックは立ち尽くす衛兵を押しのけた。

「なんて事だ・・・・・・・!」

樹木が薙ぎ倒された跡があるが、見通しは良い。
今となっては、開けた平地が真っ赤に染まっている。
正に一面、赤一色。

「生存者を探せ!周囲警戒!退路の確保も忘れるな!」

衛兵達の指揮官から指示が飛ぶ。
決死の捜索活動が始まった。




捜索開始からしばらくして、
辺りには既に脅威は感じられず、
周囲の樹木には鳥達も戻って来た様だった。

捜索が一先ず完了し、後発の増援部隊が到着したのは昼過ぎの事だった。
辺りは酷い有様で、五体が揃っているものは皆無であり、
皆、どこかしらが欠損していた。
そのため、肉片の一つに至るまでかき集め、身元の割り出しに急いだ。

ギルドで管理している出発者登録リストと捜索隊名簿と照らし合わせて捜索した結果、

ギルド直轄武装戦闘警護隊 死亡10名
ドンドルマ救急医療チーム  死亡9名
ハンターライセンス登録者  死亡8名
該当所属無し         死亡4名 不明2名

合計             死者、約31名  身元不明者2名

何とも歯切れの悪い結果となった。
内訳はこうだ。

先発医療救急チーム護衛兼、討伐隊10名、全員の死亡が確認され、
先発医療救急チームも9名、全員の死亡が確認、
ギルドの依頼で出発したハンター8名も、全員の死亡が確認された。

駆けつけた時にはまだ息のあった者もいたが、既に手の施しようが無く、
苦しみながらこの世を去った。
又、登録情報や身体的特徴といった検査記録から調べてみても、
どうしても4名だけ身元がわからない上に、左腕が二本も多いのだ。
どの遺体にも共通している事だが、全くと言っていい程喰われた痕はなく、
かき集めた肉片で全ての遺体の欠損部分が揃っているのだ。
詳しく分析している余裕はないが、可能性としてはこうだ。

1. 身元不明4名は密猟者である可能性があり、
  その仲間の内、残る2人の左腕である可能性が最も高い。

2. 密猟に入った森で、「何かしらの脅威」と出会い、
  抵抗するも、文字通り、手も足も出せず敗北。

3. その戦闘の様子を正規のハンターのために派遣されていた
  観測隊の気球に発見される事を恐れ、仲間を見捨てて逃亡。

4. 一度は去った「何かしらの脅威」は、正規のハンター達が通過しようとした時、
  もう一度、この現場に現れて襲われたであろう事。

5. その様子をギルドに伝えた観測隊が、緊急医療チームを護衛付きで
  派遣したにも拘らず、無念にも全滅した事。


単純に考えれば以上の様になると思われる。

だが、心配なのは切断された左腕の持ち主達だ。
恐らくは右利きだったのだろう、腕には今でも盾が握られている。
とっさの防御も間に合わず、衝撃と共に吹き飛ばされたのだろう。

「一体、何が相手だったんだ・・・? こんなの見た事がない・・・・」

今の問題は、相手が「何か?」ではなく、この左腕の持ち主を探す事だ、
そう頭を切り替えるにはほんの少し、時間が必要だった。
そしてポラックは思う。

「もし、出発を渋っていなかったら、私もここで転がっている肉塊だったのだろうか・・・」

背筋に冷たいものが走る。
しかし、このままではいけないと気を取り直し衛兵指揮官に話しかける。

「この左腕の持ち主達は心臓に近い動脈をやられている。
 一刻の猶予もない。早く保護をして、この脅威から遠ざかる事が先決だ。」

もっとだ、とうなずく指揮官は背後で整列する重装備の衛兵に向かって言う。

「緊急事態だ!4名を1部隊とし、4部隊を編成!各個、視認可能距離を保ちつつ、
 残る生存者の捜索、未確認の脅威の索敵にあたれ! 尚、脅威を発見した場合、
 戦闘はせずに報告しろ!戦闘の必要はない! ケツをまくって逃げて来い! 
 以上!」

何とも頼もしい指揮官だな、とポラックは思う。
この惨状を目の当たりにしても尚、臆する事なく指示を飛ばす。
しかも、逃げて来い!とは恐れ入るな、と感心する。
まぁ、当然だろう。
仮に戦闘になったとしても、恐らく、勝てない。
死体を増やすだけだ。
それがわかっているから、あんな言い方をしたのだろう。
彼は部下にも慕われているのだろうな、と思った。
だからこそ、全滅した部下を思うといたたまれないのだろう。
その無念が感じ取れる目をしているな、とポラックは彼に同情していた。

もう昼を過ぎている。
日が落ちる前の、最後の捜索が始まった。


続く


blogram投票ボタン
MHF・攻略ブログ
関連記事

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply